年明け1月早々に開始されるものとみられていた日米の通商交渉ですが、米国政府機関の一部閉鎖や米中貿易交渉に時間がかかったことから3か月以上ずれ込んでいよいよ4月15日から本格的な協議が開始される見込みとなりました。

https://www.asahi.com/articles/photo/AS20190313000669.html

USTR・米国通商代表部は昨年末と日本との貿易協定交渉に関しては物品の関税引き下げ・撤廃のみならず、自国に有利な通貨安誘導防止、通関手続き緩和など非関税障壁分野22項目を交渉対象とすることが明らかになり、事前の日本政府の説明と大きく異なる交渉であることが既に詳らかになっており、日本政府が昨年来一貫して国民に説明してきたTAG・物品交渉ではないことはもはや鮮明な状況です。
これにより知的財産権の保護や電子商取引ルール、国有企業の優遇禁止、遺伝子組み換えや残留農薬を規制する衛生植物検疫措置もすべて交渉対象となり、かなり包括的な協定の締結となりそうです。その中でも最も注目されるのが為替条項の締結となります。

為替条項の明記はもはや逃げようのない締結事項

日本側はしきりにTAGに為替条項など入れて交渉するつもりはないと主張しているようですが、交渉の達人である弁護士のライトハイザーを相手にして逃げ切るのは
ほぼ難しい状況で、とくに足元で並行して行われている米中の貿易協議においても中国が為替に関して一定の覚書に応じる姿勢を見せているだけに、日本だけFTAに為替条項を入れずに逃げ切れる可能性は極めて低く、為替条項を入れた締結になることはほぼ間違いないものと思われます。

海外のファンド勢はこの日米交渉が開始されるのを首を長くして待っているともいわれ、実際に交渉がはじまりトランプなどがドル高けしからんといった発言をした途端にドル円は激しく売られるリスクが高まりそうです。
実際、日米の物価水準を加味した実質実効レートベースではドル円は史上最高の
ドル高円安水準にあるとされており、80年代中盤の1ドル200円から250円程度の時とほぼ同じ円安レベルにあることから、具体的な価格提示はないとしても米国は少なくともここから10~15%の円高を強く求めてくるリスクが高まります。
現状の水準からいけば100円割れになってもおかしくないわけですから、この協議の進行で円高が想像以上に進むことは覚悟しておく必要がありそうです。

2400兆円近くに膨らんだ米国の債務を減らすのはドル安が一番

米国はすでに国債発行による累積的な債務が日本円にして2400兆円という巨額なボリュームに膨れ上がっています。これは意外にもオバマ政権時にかなり膨らんだものですがトランプ政権になってからも一段とその額は膨れ上がってきており、いつの間にか国債借金大国日本を2倍レベルにまで上回る厳しい状況に陥っています。
しかし米国がまじめに財政再建に取り組んで債務を減らしていくとは到底思えず、ドル安を無理やり示現することでその債務を帳消しに動く戦略にでることは間違いなさそうです。実際トランプは大統領就任直後から識者をあつめて第二次プラザ合意実現の可能性を模索しているともいわれ、このプランの実現のためにも主要国とのFTAに為替条項を組み入れることは必須の条件となりつつあるのです。

日米通商協議は5月に向けてかなりピークを迎えることになりそうですが、史上初の10連休とタイミングが絡んだ場合いきなり本邦勢がお休みの時期にドル円が円高に走り出すリスクは相当高そうで、いわゆるフラッシュクラッシュが起きなくてもこのお休みの間に円高に振れてしまうリスクは今から十分に意識しておくことが重要になりそうです。