ここのところ中国政府から発表される経済指標は軒並み好調で上海株も大きく上昇しています。4月17日発表の2019年1~3月期の実質成長率は、前年同期比6.4%と昨年10~12月から横ばいで、市場予測を上回っており3月にかけて製造業の景況感や生産などの指標が改善しています。ちょうど全人代を挟んだ時期だけに数字が本物かどいうかはかなり疑わしい部分もありますが、総じて改善していることを市場は妙に楽観視していることが窺われます。
市場はアルゴリズムによる売買が主流になっていますから見かけ上好調な結果がヘッドラインに流れればこれまで以上に市場は好感して買いをしかけてくる印象が強く、逆にパッシブ投資が増えていることからダメとなるといとも簡単に切ってくるという昔にはない相場状況も中国経済の楽観視を必要以上に増幅させている感があります。

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昨年秋からの政府の景気対策がもう数字に反映されたのか?

中国政府は昨年秋から本格的に景気対策に乗り出しており、所得税減税の8400万人が課税対象から外れるなど確かに積極的な政策を打ち出していますし、今年に入ってからは1~3月のインフラ投資が4.4%増えており、こうした政策の結果が早々と数字に示現したとみることもできますが、さすがにそのタイミングが早すぎるという指摘もあり、景気回復が事実と断定するのはなかなか難しい状況となっています。
この3月の数字がよかったのは単に昨年の同時期の春節の生産や輸出が低調だったため発射台が低かっただけという指摘もあり、まだ4月以降の数字をみないかぎり本当の回復かどうかはわからないという指摘もあります。
とくに中国の主力産業ともいえる携帯電話は7%減、自動車も3%減、半導体が2%減と米国と関税でもめている領域がすべて減少しているのも気になるところで個別にはかなり気になるところが多いのに果たしてこれで本当に本質的な景気が回復しているのかどうかが大きな問題です。
そもそもGDPの成長率が何が起きてもつねに6%超を維持していること自体が作られた数字ではないかという指摘はこの国につきまとっている状況で、本当は話三分の一の2%台なのではないかという話が常に飛び出す状況ですから、個別の主要産業に回復が見られない限りにわかには信用できないというのも頷ける話といえます。

中国にもはびこる両建て経済の影

一方で企業や家計による新規の資金調達額は1~3月に8兆1800億元、日本円にして135兆円と四半期ベースでは過去最高の額に及んでおり、この国も借金をして経済を高めるというほかの先進国がやっている両建て経済がかなり進んでいることが気になるところです。
とくに今年中国では国内民間企業が社債の大量償還を控えていることからかなりデフォルトリスクが高まるものとみられており、この部分については特段改善が進んでいないのも気になるところです。格付け会社フィッチの調査では2018年だけで45社、計117銘柄の社債がデフォルトに陥っているといいますから尋常ではなく、今年中に償還となる4026億元、日本円にして6兆6308億円規模の不動産関連社債が無事に満期支払いを実現できるのかどうかにも注目が集まりはじめています。
中国の不動産系の企業では社債償還を見越して旧正月明けから一斉に新規の社債を発行しはじめていますが資金の返済が自転車操業状態に陥り始めている点も非常に危惧されるところで、足元の株価の上昇はこうした企業にとってはかなり大きな恩恵になってはいるものとみられますが、一方で相変わらず借金を増やして乗り切る手法をいつまで続けられるかもリスクになりつつあります。

中国経済の問題は為替にもダイレクトに影響を与えるだけにここからさらにその動向を注視する必要がありそうで、とくに円に与える影響をつねに見てかなくてはなりません。