新債券の帝王であるダブルラインキャピタルグループのジェフリーガンドラックがここのところメディアに登場しては社債市場に異常なレバレッジがかかっていることに対して景気後退期の最大のリスクであると強く危惧しはじめており、市場に注意を促しているのが気になります。

Photo Bloomberg https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-13/POA9WH6K50XT01

これは直近ではYahoo Financeのインタビューに答えたもので、足元の状況ではまだ顕在化しないものの、景気後退が進んだ段階でかなりのリスクとして頭をもたげてくることになるのではないかと強く警告を発しているのです。ジェフリーガンドラックは昨年1月に米国S&Pが大きく上昇したときにも年後半に下落すると予測してぴたりと先行きを当てているだけに市場関係者も無視できない内容となりつつあるのです。それではその死米国の社債市場は何がそれほど危ないのでしょうか。

大きくなり過ぎたBBB格社債の割合

社債関連ということでいいますとレバレッジドローン市場から派生してCLOの市場規模が大きくなりすぎているのは市場でもよく知られていますが、それ以外にも一般的な社債市場で、ファンド勢が購入できるギリギリの格付けのBBB格債の割合がきわめて大きくなっていることをガンドラックはリスクの拡大として指摘しているわけです。この適格ぎりぎりのBBB格債は米国だけでもなんと2.5兆ドル、日本円で275兆円発行されており、今のところ2008年のサブプライムローンの破綻時の債務総額10兆ドルにくらべれば4分の1程度ですが、CLOの市場も1.3兆ドルとなっており、いずれかの市場に端を発して信用収縮が起き始めれば負債総額は格段に大きなものへと成長するリスクとなっていることがわかります。今後経済状態が大きく悪化する場合に格下げが示現しはじめると市場で大量の社債の売りが進む可能性はかなり高く、あらゆる資本市場に信用収縮の波が波及してリーマンショックを超えるような大きな相場下落が示現する危険性があるというわけです。

レバレッジもかかり過ぎ

このBBB格の適格ぎりぎり社債はジャンク債並みのレバレッジがかかっており、投資適格社債といいながらその信用度はあきらかに悪化していることがわかります。

足元のA格債のレバレッジはせいぜい1.75倍程度ですが、BBB格債はすでに2.5倍以上に膨れ上がっており、格付けレベルの低い債券ほどレバレッジが拡大するというまずい状況が進行中です。ジェフリーガンドラックもこの点を非常に強く危惧しており、市場の金額が大きいだけになにか起きると猛烈なダメージが資本市場全体に広がる点に注意を呼びかけている状況です。

これまで先進主要国の中央銀行が過剰とも思えるほど低金利で市中に資金を放出してきたことから莫大な資金が社債市場やハイイールド債、レバレッジドローンなどの市場に流れ込み、多くの企業は実に楽に資金を調達することができてきたわけですが、今後大量にリファイナンスの時期が到来すると、これまでのように低金利の条件で借り換えができなくなるケースが続出することも考えられ、想定外の金利上昇が進むようなことになれば、やはり信用収縮が猛烈に進行する危険性もでてくることになります。現状ではこの市場が今日の明日でおかしくなるといった危機的なレベルには至っていませんが、サブプライムローンの破綻の時もぎりぎりまで市場では楽観論がでていただけに大した問題ではないと考えるのはかなり危険そうです。為替市場もこうした社債市場の変化で大きく動くことになるのは間違いありませんので、引き続き米国の社債とその関連市場の動向には注視しながら取引を進めることが肝要になりそうです。