世界的に見てもトルコリラの買いを継続するのは日本のFXトレーダーがもっとも多いのではないかと思われるぐらい、本邦の個人投資家はスワップのつくトルコリラのロング取引に執着する方が多いようです。
確かに年利24%というのは破格の高利ですから、動かない為替相場の中で本来の利益獲得要素であるスワップに注目が集まるのも非常によくわかるわけですが、その一方で24%の政策金利の向こう側にあるリアルなトルコ事情というものがなかなか国内では包括的に理解できない部分があり、とにかくストップロスを置くこともなく長期にトルコリラをロングすることにはかなりリスクが高まっていることが感じられます。

米国との関係改善期待から値を戻すトルコリラ

Photo Reuters:https://www.rt.com/news/447338-trump-open-erdogan-meeting/

足元の相場ではトルコと米国の関係改善期待からトルコリラの買戻しが強まりつつあります。5月29日にトランプ・エルドアンの電話会談が行われG20大阪サミットでの首脳会談が実施との報道から買戻しが入っているわけですが、話は複雑で、そもそもNATOに加盟しているはずのトルコがロシアのミサイルシステムS-400 を購入してNATOのレーダー網で発射させようというのですから、東西の関係がねじれているのは間違いなく、この購入話が一旦中止にならないかぎりそう簡単に関係が修復されるとは思えない状況です。ロシア製S-400 のミサイルは早ければ7月にもトルコに出荷され到着する可能性があるとされていますから、今のところ米国の対トルコ制裁がなんら回避されているわけではない点には相当注意が必要で、楽観視は禁物な状況です。トルコへのロシアミサイル出荷が報道されればトルコリラは再度激しく売られるリスクにさらされることになります。

特にトルコと地続きでお隣の国のシリアではシリア反体制派に対してロシアとアサド政権が攻撃を強化しているわけですから、地政学リスクは我々が考えている以上に高く、中東情勢にもつながっていることから話は単純ではなさそうでエルドアンがロシアに接近している状況を簡単にやめるとも思えず、市場の期待どおり米国とトルコの関係が改善されるのかどうかはわからない状況です。

イスタンブール市長選の再投票もネック

6月23日にはトルコ最大の都市であるイスタンブールの市長選のやり直し投票が実施されますが、こちらも野党候補の当選無効から無理やりやり直し選挙になっている点は非常に大きな問題で、トルコ国内でもかなり市民の反発を招いているようです。今回これで与党候補が勝利するという話になるとまた状況はおかしくなりますし、再度野党候補が勝利した場合一体どうなるのかも気になる所です。したがってこの選挙を挟んでトルコリラが大きく動くことも予想されるだけに常に政治的な材料で相場が動くことに相当気をつかう必要がありそうです。この再選挙にも当然エルドアンが絡んでいるとされていますから、米国との対立が回避されてもトルコリラにとってはかなりのリスク要因が残ります。

インフレにあえぐ国民生活

トルコ国民はとにかくインフレに喘いでおり、外側から見れば24%の政策金利はおいしく見えるものの内側の国民はせっせと米ドルやユーロへと資産を切り替えるのに躍起で、政権から一定の歯止めがかかっていることからビットコインなどの暗号資産へのシフトさえ始まっていると言われています。
それだけに通貨としてのリスクはかなり高く、おかしな状況になったときには躊躇なく一旦損切をするなどして相場から退場できる身軽さが必要になってきているようです。
とくにリスクオフでドル高、円高が進んだ場合もっともしわ寄せがくるのがトルコリラ円でありドルトルコリラとなりますから一定の条件が整った時には相場からいつでも出られるようにすることが重要です。