どうやら安倍政権は10月に予定されていた消費増税を実施することを決め、夏の衆参同時選挙も見送ることを正式に決定したようです。

福岡で開催されたG20 蔵相・中央銀行総裁会議で改めて麻生大臣が増税について出席者に説明したというのですから、さすがに今さら辞められないところまで来ているといえます。ただ、この会議の共同声明では、世界経済の下振れリスクとして貿易摩擦を揚げ、G20はこれらのリスクに対処し続けるとともにさらなる行動をとる用意があると共同声明に謳ったはずが日本だけこの時期に増税を実施することも決めているわけですからおよそ整合性がとれないのは事実であり、この時期に実施の可否を決定するというのも実業界的には酷く迷惑な話ではありますが、なぜ再延期をしなかったのかが非常に疑問に思われる状況となってきています。

参議院選での勝算が増税決定の決め手か

選挙の動向についてはここでは語りませんが、恐らく参議院選挙も今のままで勝算ありという確信が消費増税の実施正式決定にもつながっているものと思われます。

ただ、足元の景気は決していい状態に保たれているわけではなく、とくに実質賃金が政府の発表する統計数値よりもかなり低下している状況下で本当のところが数字の改ざんでよくわからない状況に陥っているのもまた事実で、このまま世帯の可処分所得が伸び悩むなかで無理やり消費増税を実施した場合かなり景気が冷え込む可能性は相当高くなりそうです。

政府はポイント還元制度を導入して景気対策をするとしていますが、過去の消費増税実施のたびに消費水準は下落しており、国民の大多数が増税実施で金を使わないことによりそれに対応してきているという厳しい事実があります。

したがって消費を前提とした景気対策を打ってもほとんど空振りになりかねないところにこの増税の恐ろしさがあり、多くの国民の景気実感を政権は正確に把握していないのではないかとさえ思われる状況です。

景気の先行指標である国内株相場は一段と低迷の可能性

景気の先行きを示すものなるのが株式市場ですから、消費財をはじめとして国内株はここからかなりの低迷が予想され、秋に向けての相場状況の悪化が危惧されるところです。日銀は景気対策のためにさらに緩和を実施する余地があるとしていますが、果たしてそれで株価が持ち直し、円安が持続することになるのかもかなり疑問で、ここからさらなる緩和を実施するといった場合、「長短金利の引き下げ」、「資産買入れの拡大」、「マネタリーベースの拡大ペースの加速」のうちのどれを持ち出してくることになるのかも非常に気になるところです。

このままでいきますと日本が先進国中最初にリセッションに陥るリスクはかなり高くなりそうで、相場の動きにも相当注意が必要になりそうです。すでにこのコラムでもご紹介していますように、米国はイールドカーブのフラット化、もしくは逆イールドが示現して以降、利上げから利下げに転じた直後に過去2回とも大きな株式相場の下落に見舞われており、ここからはかなり相場に危うさが伴いそうな状況です。外側からの相場下落リスクに加え、自国内での景気低迷が加速した場合には株式市場にもそれなりの影響がでることは想像に難くないものがあり、この夏に向けてのFX投資もかなり慎重に進めていく必要がでてきているようです。

日米通商交渉の結果公表も追い打ちに

さらに付け加えれば8月には日米通商交渉の結果が詳らかになる予定ですから、これがさらに市場の打撃にならないことを願いたいばかりです。雲行きはかなり怪しくなってきています。ドル円については依然として下方向への動きを常に意識して売買していく必要がありそうな時間帯にさしかかってきています。