Photo Bloomberg:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-07-02/PU19ST6S972901

G20 やトランプ大統領の板門店電撃訪問の陰で大きな話題にはなりませんでしたが、7月2日に開催されたEU臨時首脳会議で次期ECB総裁としてフランスのラガルドIMF専務理事が指名されることとなりました。ECBで女性総裁が選択されるのははじめてのことですが、ドラギ総裁からラガルド総裁となった時にECBの政策がどのように変化することになるのかが市場の注目となりそうです。おりしも各国中央銀行は挙って利下げに動こうしているわけですからFRBと相対的な関係にあるECBの動き次第では為替の流れも大きく変わるだけに関心が集まるのは無理もない状況です。

政治家出身で経済・金融の専門家では決してない微妙な存在

クリスティーヌ・マドレーヌ・オデット・ラガルドはフランスの政治家で弁護士でもあります。大学卒業後米国のローファームで働いていましたが2005年に政治家に転身し、2007年にからフィヨン内閣で経済・財政産業大臣に就任しています。
2011年6月にはIMFの専務理事に就任して今回指名を受けるまで職務を継続してきた存在です。
ただ、この経歴を見てもお分かりいただけるとおり経済学位を取得しているわけでもなく、金融の専門家としての経歴もないことからMITで経済学の博士号を取得しゴールドマンサックスでは欧州の副会長も務めてきたマリオドラギとはかなり異なる経歴であることは事実であり、米欧ともに経済学者ではない人物が金融政策のトップになるという点で時代が変わってきていることを感じさせられます。

調整能力の高さが売り物か

IMFの要職を長年務めてきたという点ではラガルド女史は調整能力の高さに定評があるようですが、ここ数年ドラギ総裁はかなりうまく難題を切り抜けてきた感があり、そうした処理能力がラガルドに継承されるのかどうかも大きな問題になりそうです。欧州経済は屋台骨のドイツの景気がかなり悪化しており中国からの影響をもろに受けている中にあって英国がBREXITで脱落しようとしている真っ最中ですから、この先どのようにブロック経済を統合していけるかが大きなポイントとなりそうです。またドイツ銀行が多額の負債を抱えて破綻寸前の状況に陥っているのも直近の懸案事項であり、処理の方法を間違えばドイツ発の金融危機に発展しかねないことからこちらへの対応をどうするのかにも注目が集まります。
退任するドラギ総裁は既に、ユーロ圏19カ国経済について追加支援の必要性を示唆しており、ラガルド氏が次期総裁就任後に負う任務は、利下げや量的緩和の再開などの形での金融緩和政策を引き継ぐことが大きなものになりそうです。
ユーロ圏は日本とともに数年にわたるマイナス金利政策や2兆6000億ユーロに上る債券購入にもかかわらずインフレ率はECBが目標とする2%をやや下回る水準の半分程度にとどまっておりインフレはなかなか進行しない状況にあります。ごく近い将来債券購入の再開も想定されており、ECBの政策次第で足元の中央銀行バブルが継続するのかどうかにも大きな影響を与えそうな状況となってきています。
米国FRBは7月にも利下げを行う可能性が高まっていますが、欧州のECBがそれにどのように対応して政策を打ち出していくことになるのかがラガルド新総裁週に直後から大きな注目を浴びることになりそうです。