トルコ政府は7月12日ロシア製の地対空ミサイルS400の搬入が始まったと正式に発表し、米国の反応が注目される状況となってきています。

このS400ミサイルは購入はしたものの当分倉庫に入れて利用はしないなどとエルドアン大統領は詭弁を使っていますが、米国のみならずEUからも危惧の念が高まることは間違いなさそうで、米国からの追加制裁が発動された場合トルコ経済に与える影響はかなり大きそうで、今後の動きが注目されます。

そもそもNATOのレーダー網はロシアを想定して作られているわけですが、そのNATOに加盟しているトルコがロシア製ミサイルをNATOレーダー網を利用して発射するということ自体異例中の異例で、通常はあり得ない状況だけにこのまま穏便に事が済むとは到底思えないところに差し掛かり始めているようです。

Photo 日経新聞 https://www.nikkei.com/news/image-article/?R_FLG=0&ad=DSXMZO4730048012072019FF8001&dc=1&ng=DGXMZO47300520S9A710C1FF8000&z=20190712

中東の地政学リスクの中で主役を演じるようになったトルコ

中東といえばとにかく産油国が圧倒的な力を誇っており、さらにイラクやシリアという難しい国が存在していることは周知の事実となっていますが、その中でも存在感が強まり、エルドアンが大統領になってからのここ数年は中東に隣接するトルコが台頭してきている状況にあります。最近ではエルドアン大統領はトルコこそはスンニ派イスラム世界の指導者であると口にするほどでサウジアラビアとの対抗意識をむき出しにする姿勢を強めており、NATOからの離脱はないもののかなり半西欧といった姿勢を強めている点が米国、EUともに懸念事項となっていることは間違いありません。たしかにトルコがこれからも妙な主役を演じる可能性は高そうですが、それがトルコリラの上昇につながるとは到底思えない状況で、為替でトルコリラに向き合う方は相当注意しなくてはならない時間帯にさしかっているといえます。

米国の追加制裁実施は不可避か

G20 大阪の会談ではあまり目立った存在ではなかったエルドアン今回のミサイル導入で特に米国との関係は相当悪化することが予想されており、制裁次第ではさらに同国の経済の悪化が懸念されます。とくに悪化の一途をたどっているトルコ経済にとっては欧米との関係の強化が欠くことのできない状況ですが、ロシアミサイル導入によりかなりぎくしゃくしたものになる危険性は高そうで、為替ではトルコリラの下落が非常に心配されるところです。トランプが追加制裁を発動した場合には、トルコリラはさらに下落することは間違いなさそうで、突然ツイートでそれが発表された場合いきなり暴落といったリスクにもさらされそうです。

本邦個人投資家は一旦トルコリラ円ロングを手仕舞うべき状況

このロシアミサイル搬入報道を受けて12日段階からトルコリラは対ドルでも対円でも下落をはじめており、一旦は値を戻しましたがここから先上昇はまったく期待できないところにあります。確かにスワップがつくという点では他の通貨にはない魅力があるのは事実ですが、それとは別にこの国が抱えている問題はかなり深刻で、スワップポイントだけを期待し喜んで買いを入れている場合ではないところにあることをしっかり認識する必要があります。

リスク&リワードという言葉がありますがトルコリラに関しては足元のスワップ取り付け状況を勘案してもリスクのほうが断然多く、手を出せる状況にはありません。

とくにデフォルトのような事態に陥りますと証拠金すべてが飛んでしまいますから、相当深刻で迂闊に手を出すべき状況にはないことを理解しなくてなりません。